Up 行列の導入  


  1. 「授業を論理的に構成する」で指導案をつくると,「行列の導入」の場合はだいたいつぎのようになります:

    「線型変換の計算」を主題化 前回は,「線型変換」の作図をした。

    今度は,(x1, x2) に対応する (x'1, x'2) を計算で求められないか,考えてみる。
    問題は,つぎの (x'1, x'2) を求めること:
      u'1 1 + u'2 2 = u1 x'1 + u2 x'2
    計算 u'1, u'2 を u1, u2 で表せば,これを左辺に代入することで右辺の形の式になる。
    そこで,つぎのようにする:
       u'1 = u1 11 + u2 12
       u'2 = u1 21 + u2 22
    計算すると,
       x'1 = x1 11 + x2 21
       x'2 = x1 12 + x2 22
    行列の導入 (x1, x2) に対応する点の座標計算は,4つの数
    で決まった。
    そこで,これらを括って,(x1, x2) の対応先をつぎのように表すことにする:

    この式の読み方は,
    (x1, x2)  の   
    また,
    を「行列」と呼ぶことにする。
    ベクトルに対する行列の作用の計算規則 (アルゴリズム)
    (x1, x2) の対応先は,これの 倍。
    そして,対応先は既に計算して求めた:
       (x1 11 + x2 21, x1 12 + x2 22 )
    この二つを「=」でつないでみる:


    左辺から右辺の式が書けるような規則性が見つからないか?
    (生徒に見つけさせる)
    こんな規則になっているわけだ:


    この規則でほんとうに対応先が求まるかどうか,最初の図形で確かめてみよう。
    時間の都合から,この点だけやってみよう。
    (一つの点を選んで,計算してみせる)
    収束 今日の学習はここまで。
    今日学習したことの練習は,次回の授業でする。
    まとめ 今日は,線型変換の計算を導いた。
    計算を考えることで,「行列」が出てきた。
    図形の変形は,「行列倍」としてできることになった。


    注意 : この授業では,つぎの3つの区別を曖昧にしています:
      点の座標,点の位置ベクトル,ベクトル

    行列の作用はベクトルに対する作用です。
    ところが,この授業だと,「座標に対する作用」と誤解されてしまいます。
    しかし,点の座標,点の位置ベクトル,ベクトルの区別を正しく行えるには,論理を厳格に運用できる力が必要です。この力は,ここでは生徒に要求できません。(大学の数学の専門課程で鍛える力ということになります。)