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清水 (1934), pp.218,219
貧民窟の人達の顔には、人世に疲れ切ったことが出ている。
凄いほどにまで荒んだ相がいつも身体全体に顕れているが、乞食の人達の顔にはそうした疲れが見えない。
悠々とした相がよく看取される。
貧民窟の人達は、多くは経済社会からたたき落された落伍者であるが、なお落伍しつつも資本主義の経済内に喘ぎ喘ぎしているドン底のものである。
同じ落伍者でも乞食は全く異った経済社会の中に生きている。
乞食は不思議にもパンの不安をもっておらぬ。
乞食すれば必ず食えると信じているのである。
乞食には失業もなければ就職難もない。
そこに悠々として行ける世界があるのだ。
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引用文献
清水精一 (1934) :『大地に生きる』
谷川健一[編]『日本民俗文化資料集成・1 サンカとマタギ』, 1989, pp.155-292.
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