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清水 (1934), p.234
乞食の生活様式であるが、これは大別して三つの種類からなっている。
即ち乞食の中でも一番賛沢なものであって、家は木賃宿、あるいは借家住居などしているものがある。
よほど生活様式は吾々に近い。‥‥‥
第二種類のものは天幕生活、あるいは小屋生活であって、昔から伝わっているものとしてもこの種類が代表的なものである。
第三種類のものは全くの自然生活であって、木の蔭などに起居しているものである。
大空と大地を家にしているものはこの部類に属する。
私のいた仲間であるポンスなどは、この第二第三を綜合したものであった。
この生活者は天幕を張ったり、古蓆で小屋をかけているのであるが、天幕など言っても決して綺麗なものではない。
それはすこぶる穢い布を幾枚も合せたものであるが、いつもそれを使用しているから雨露を凌ぐには充分である。
大抵小さいのは十畳位からで、中には二十畳位の面積を持っているのもあるが、比較的多いのは十二畳位のものである。
その中に多きは十七八人から少なきも十人位は生活をするのであるから、随分密集生活である。
しかしこうした人達はむしろその密集生活を喜ぶのである。
古代は皆こうした生活様式の中に吾々人間の営みがあったものと想像される。
一夫婦を中心としての室などを持つようになったのはよほど近代になってからのことであろう。
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引用文献
清水精一 (1934) :『大地に生きる』
谷川健一[編]『日本民俗文化資料集成・1 サンカとマタギ』, 1989, pp.155-292.
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