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清水 (1934), pp.246, 247
政治は立憲共和国のようになっているのであって、決して専制政治ではない。
その点は昔の侠客などの世界とは違っている。
もちろん相当チャンの人格的動きは全体を支配するに深い関係を持つてはいるが、決してチャンのみで集団を全部的に支配するのではないのである。
チャンは絶対味を加えた大統領に等しきものであって、集団人からの推薦によってなったりする場合すらある。
決して世襲のようなものではない。
チャンの下に代議士格のものがあって、二十人に一人位の割合に選出されていて一切はこの代議士によって相談され、相謀り、最後にはチャンの承認を得るというようになっているのである。
代議士の選挙は一般人のようなものでなくて、代議士格のものが自選し、それをチャンが承認すると言う訳である。
私も三ヶ月目には代議士になった。
「若も時々よい意見を述べる。ちょっと相談相手にしてもよいが呼んで来たらいかがだろう」
「よかろう」
と云う訳で代議士になったのである。
政治に最も大切に取り扱われるのは外交、経済(大蔵)、軍備(陸海軍)、賞罰(司法) である。
そしてそれぞれこれを司るものがあって運んで行くのである。
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引用文献
清水精一 (1934) :『大地に生きる』
谷川健一[編]『日本民俗文化資料集成・1 サンカとマタギ』, 1989, pp.155-292.
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