Up 雨季のメカニズム──構造的分類 作成: 2024-05-06
更新: 2024-05-06


    雨季は,構造的に,およそつぎの4タイプに分類できる:
      1. 中緯度の雨季
      2. 低緯度の雨季
      3. 海風季節風の雨季
      4. ヒートアイランド大都市の雨季
    雨季の地域性は,この大枠に地勢の特異的作用が合わさって現れるものである。


    A. 中緯度地域の雨季
    春と秋は,低緯度の暖気と高緯度の寒気の拮抗 (「前線面」) が,地域の気象の大きな構造になる。
      春は拮抗面が低緯度から高緯度に移動する季節で,秋は拮抗面が高緯度から低緯度に移動する季節。
    この構造では,暖気が寒気の上に乗り上がり上昇気流になる。
    上昇気流は上空で冷えて,雨になる。
    こうして,春と秋は雨季である。
      例. 日本の梅雨,秋雨

    夏は,寒気が高緯度側に退き,暖気に広く包まれる。
    冬は,暖気が低緯度側に退き,寒気に広く包まれる。
    これは大気が安定する構造である。
    こうして夏と冬は,相対的に乾季になる。


    B. 低緯度地域の雨季
    低緯度でも,夏は,緯度の違いが大気の中の気温の傾きを現す。
    この構造では,最も温度の高い空気が上昇気流になり,周りの空気を吸い寄せる。
    上昇気流は上空で冷えて,雨になる。
    よって,夏は雨季になる。
      例. サヴァナ気候 (Aw)(註) の雨季

    冬は,気温の傾きが小さいので,上のようにはならない。
    結果的に,乾季になる。


    C. 海風季節風の雨季
    夏の気温は,陸上が海上より高い。
    よって,海から陸に空気が流れ,そして陸では上昇気流になる。
    この海風は,夏の季節風ということになる。
    海から流れてくる空気は湿っているので,上昇して冷えると速やかに雨になる,
    こうして,夏は雨季になる。
      例:熱帯モンスーン気候 (Am)(註) の雨季

    冬は,気温が陸上より海上が高いので,陸から海に空気が流れる。
    そしてこの流れは,陸では上空の寒気を下に吸い込む。
    陸上は,冷たい空気で安定する。
    こうして,冬は乾季になる。,


    D. ヒートアイランド大都市の雨季
    大都市は,岩サバクと同じである。
    夏は,日射による気温上昇が甚だしい。
    そしてこれに,大量のクーラーから排出される熱気が加わる。
    こうして大都市は,夏はヒートアイランドになる。
    熱気は急上昇し,これにより積乱雲ができる。
    そしてその下は,豪雨になる。
    こうして大都市は,夏が雨季になる。
      例:東京都の夏のゲリラ豪雨

    岩サバクと同じである大都市は,冬は冷たい空気で安定する。
    こうして,冬は乾季になる。,



    註: 「サヴァナ気候」, 「熱帯モンスーン気候」
    所謂 「サヴァナ気候」, 「熱帯モンスーン気候」 は,以下の図に見るように実際には連続するものになり,2つの間に明確な違いを立てるというものではない。
Wikipedia 「サヴァナ気候」, 「熱帯モンスーン気候」 から引用:
「サヴァナ気候」 の地域

「熱帯モンスーン気候」 の地域