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Up <自転球体上移動における転向>のシミュレーション 作成: 2022-10-13
更新: 2023-02-08


    つぎは,自転球体上の移動軌跡をシミュレートしたものである :

    シミュレーション1
赤道で北へ発したときの,その後の移動軌跡
(完全に北向きだと直進になるので,発進の向きをわずかに東に傾けた)

    シミュレーション2
北緯20°, 50°, 80° のそれぞれで「東へ」初速 50 m/s で発したときの,その後の移動軌跡

    (1) <遠心力>の転向力効果

    自転球体の半径を R,角速度を Ω とする。
    緯度 θ の点 P での遠心力 α(θ) は,
      α(θ)=(R cos(θ) Ω2
    これを P での接平面に射影した β(θ) は,
      β(θ)=α(θ) sin(θ)=R Ω2 cos(θ) sin(θ)

    自転球体を地球としたときの β(θ) を計算してみる。

    「地球1周4万km」と「1日24時間」を使って,
      R=(40000×1000/2)/π (m)Ω=2π/(24×3600) (radian/s) R Ω2=((40000×1000/2)/π)×(2π/(24×3600))2=(40000×1000)×(2π)/(24×3600)2
    これより,θ = 10°, 20°, ‥‥, 80° に対する β(θ) の値は
緯度 β (m/s2)
10° 0.0058
20° 0.0108
30° 0.0146
40° 0.0166
50° 0.0166
60° 0.0146
70° 0.0108
80° 0.0058



    (2) <回転速度の緯度差>の転向力効果

    緯度 θ の地点の回転速度は,つぎのようになる:

    (a) 東向きの移動
    球面上の移動の速度は,大円に沿う。
    東向きの移動のときは,つぎのようになる:

    移動すると緯度が下がるので,回転速度が変化する:


    この加速度は,vv に垂直で赤道の方を向く:

    移動には,この加速度に対する慣性加速度として,同じ大きさで逆方向──即ち,極方向──の加速度がかかる。
    この加速度は移動方向と直角であり,転向力加速度である。
    そして,向きである。

    シミュレーション2のグラフは,移動発進直後の極側への転向と,その模様の緯度差を表している。
    それは,この左向き転向力加速度によるものである。

    この加速度の大きさは:
      ddt(R cos(θ) Ω)=ddθ(R cos(θ) Ω) dθdt=R Ω sin(θ) dθdt

    自転球体を地球にしたときの γ(θ)=R Ω sin(θ) (単位は m/(radians) ) を計算すると:
緯度 γ(θ)
10° 80
20° 158
30° 231
40° 298
50° 355
60° 401
70° 435
80° 456

    dθ/dt の方は,時点ごとに,そのときの移動速度 vv (向きと大きさ) で決まる。


    (b) 北向きから東に少しずれた方向の移動
    移動による回転速度の変化は,つぎの加速度になる:


    移動には,この加速度に対する慣性加速度として,同じ大きさで逆方向の加速度がかかる。
    この加速度は移動方向と直角であり,転向力加速度である。
    そして,向きである。

    ここでは「東へ」と「北北東へ」の二つの移動を取り上げたが,この例が示すように,移動に働く転向力は──同じ半球でも,移動の方向に依存して──右向きにも左向きにもなる。
    気象学は「北半球では右向き」を説いているが,誤りである。



    (3) 「北に進み,それから南に方向転換」?

    シミュレーショングラフは,「北に進み,それから南に方向転換」模様を現す。
    この内容は,「北に進むにつれ速度を減らし,やがてゼロになって折返し」ではない。

    移動の転向は,軌道の大円の変更である。
    この軌道大円変更の連続が,グラフでは「北に進み,それから南に方向転換」のように見えるということである。