- 無機物 → 有機物 ─ (分子システムの進化) → 生命
- メカニズム :「自己組織化」「新陳代謝 (動的平衡)」「自己アジャスト」
- 「自己組織化」の概念
システム設計図は,存在しない。
ボトムアップが,<行動するシステム>を現す。
そしてその<行動するシステム>は,ボトムの条件からは全く予想できないものになる (「創発」)。
- 「触媒セット・自己触媒ネットワーク」(S. Kauffman)
「われわれが複雑だと思っている生物の本質は,
それほどややこしいものではない」
「生命は生じようとしている」
- 「自己アジャスト」
- <機能>には,器官を対応させるのではなく,ネットワークを対応させる。
ノードの疾患による機能喪失に対しては,ネットワークの再調整を以て,機能復活を実現する。
- 化学進化の舞台
MacFarland, 2016
- 地球の地質の進化
- 地質の6大元素
O (47%), Si (28%), Al (8%), Fe, Ca, Mg
この構成の理由:
地殻にはケイ酸塩が多い。
ケイ酸は負電荷の酸素原子 (O-) が多いので,中和用の正電荷がなければいけない。
正電荷は金属の陽イオンが提供し,ケイ酸塩なら Al, Fe, Mg, Ca の陽イオンを使うため,そこで6大元素が出揃う。
- 酸化物,硫化物,ハロゲン化物 → 鉱物の種類を増やす
- 生命も岩の成分から生まれ,死ねば大地に帰るので,生命と岩の成分には重複が多い。
- 複製システムの出現
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小川 (2013), p.10
どういうわけか、偶然が重なって太陽系の惑星の中でも地球だけに生物が育つようになった。
これほど神絡的で不思議な現象はない。‥‥‥
重要な偶然の一つは、塵の中に含まれていた炭素である。
炭素は周期律表の第四族、第二周期に位置し、ケイ素やゲルマニウムと同族である。
炭素の原子量は 12.01 で、原子核の周りを六個の電子が回っている。
このうちの四個の電子は、ほかの元素と「共有結合」でつながり、炭素同士でも結びつくため、複雑な化合物を作ることができる。
また、炭素化合物は「共有結合」のために結合の度合いが強く、きわめて安定性が高いとされる。
原始大気中にガス状態でとどまっていた炭素は、次第に有機物となって生物体に集積された。
一方、周期律表で見ると、近くにあるケイ素は無機物として岩石や土壌に含まれている。
泥の中に多いケイ素はイネ科植物や珪藻に取りこまれたが、有機物の骨絡になることはなかった。
要するに、炭素があったおかげで数百万を超える有機化合物ができて作物が生まれ、炭素化合物が動物のエネルギー源として使われるようになったのである。
もしも、炭素と水素、酸素,窒素,リンなどがなかったら、今日のような地球も我々も間違いなく存在しなかったことだろう。
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同上, p.11
20世紀に入って有機化学が発展すると、原始地球の泥と無機物の塊の中で、アメーバを思わせる生命体が誕生したという説が出始めた。
これが先のコアセルベート説につながった。
化学反応によって無機物から有機物が生じることを実証したのは、有名な「ユーリー ミラーの実験」だった。
1953年にシカゴ大学のハロルド・ユーリーの研究室にいたスタンリー・ミラーという学生が、生命の誕生を再現するために簡単な実験を行なった。
彼はガラスの反応容器に水素、アンモニア、メタンを含む原始大気に似たものを入れ、水蒸気を送って充満させ、六万ボルトの火花放電を試み
た。
これは雷を模したものだったが、一週間たつと、化学反応によって、生命のもとになるグリシン、アラニン、アスパラギン酸、バリンなどのアミノ酸ができていた。
その後、紫外線や放射線照射なども試され、原始大気の組成を変えると、多くの有機物が生成することが知られるようになった。
ただし、原始地球の大気組成はユーリー・ミラーが用いたものとかなり異なるので、そのまま鵜呑みにしないほうがよさそうである。
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- 参考Webサイト
- 引用/参考文献
- MacFarland, Benjamin (2016) :
A World from Dust : How the Periodic Table Shaped Life
- Oxford University Press. 2016.
- 渡辺正[訳]『星屑から生まれた世界──進化と元素をめぐる生命38億年史』, 化学同人, 2017.
- 小川 真 (2013) :『カビ・キノコが語る地球の歴史──菌類・植物と生態系の進化』, 築地書館, 2013
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