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原子力発電の燃料

 原子力発電は燃料のウランを連続的に核分裂させ、そのとき発生する熱で蒸気をつくり、タービンを回して発電しま す。原子力発電所でいったん使われた燃料の中には、燃え残りのウランや新たに生まれたプルトニウムが含まれていて、これらは加工することで再び燃料として 利用することができます。ウランにプルトニウムを混ぜた燃料(MOX燃料)を新しくつくり、今ある原子力発電所で使う、『プルサーマル』という発電方法も あります。

※核分裂が連鎖反応により、持続して進む状態を臨界といいます。

 ウラン235の原子核が新しい中性子を取り込むと原子核が分裂し、このとき大きな熱エネルギーと2〜3個の中性子を放出します。
 原子力発電所では水(軽水)と制御棒によって、ゆっくり連続して核分裂反応が起きるようにコントロールしています。

燃料集合体

 ウラン鉱山で採鉱されたウランは精錬→転換→濃縮→再転換という工程を経て、原子力発電所で使用する燃料に成型加工されます。
 軽水炉では通常、ウラン235が数%程度含まれるウランを酸化物にして焼き固めたもの(これをペレットと呼びます)を使用します。ペレットは直径、高さ とも約1センチメートル程の円柱形で、これを被覆管と呼ばれる長さ4メートル程の金属製のさやに密封したものが燃料棒です。沸騰水型軽水炉(BWR)で使 用する燃料集合体はこの燃料棒を50〜80本束ねて組み上げます。
 沸騰水型軽水炉(BWR)の場合、400〜800体程度の燃料集合体が原子炉に装荷されます。

減速材

 核分裂によって新しく発生する中性子は非常に高速です。これを高速中性子と呼び、このままでも核分裂を引き起こすことは可能ですが、 この速度を遅くしてやると次の核分裂を引き起こしやすくなります。速度の遅い中性子を熱中性子と呼び、高速中性子を減速し熱中性子にするものを減速材と呼 びます。軽水炉では熱中性子で核分裂連鎖反応を維持するために減速材として水を用います。

冷却材

 核分裂によって発生した熱を炉心から外部に取り出すものを冷却材と呼びます。軽水炉では水を用いているため、冷却材が減速材を兼ねることができます。

制御材

 核燃料の核分裂する量を調節するため制御材を用います。制御材はホウ素やカドミウムなどの中性子を吸収しやすい物質で作られていて、 原子炉内の中性子の量を制御することができます。軽水炉では制御材を燃料棒の間に挿入できるようになっていて、これを制御棒と呼んでいます。

燃料集合体

原子炉の制御

 原子力発電所は原子炉の出力を一定にするため、核分裂の量を一定に維持させるように制御しながら運転します。沸騰水型軽水炉(BWR)で は、その名のとおり原子炉で水を沸騰させ、発生した蒸気で直接タービンを回します。炉心の出力(核分裂の数)は、中性子を吸収するための制御棒の出し入れ (位置の調整)と、炉心を流れる冷却水の流量(再循環流量)の調節により、一定になるように制御し運転します。BWRでは冷却水中に沸騰による気泡が存在 しますので、再循環流量を変更すると単位面積当たりの減速材(冷却水)の量が変化します。このため、再循環流量を変化させることにより、減速材に当たって 生じる熱中性子の量、つまり核分裂の量を制御することができます。
 初めて発電所を運転するときや、約1年に1回の定期検査が終了した後に原子炉の運転を再開するときは、新しい燃料が装荷されているため燃料中のウラン 235の濃度が高くなっています。このため、制御棒を炉内に挿入するとともに、再循環流量を低めに(単位面積当たりの減速材の量を少なく)設定し、運転時 間に応じて再循環流量を多く(単位面積当たりの減速材の量を多く)していきます。運転を継続しているうちにウラン235が消費されて濃度が低くなると、制 御棒を若干引き抜き、再び再循環流量を低減し、同様の運転を繰り返します。このような制御棒の引き抜き調整は、次の定期検査までの約1年間に数回実施しま す。通常、出力制御は、再循環流量の調節により行います。