Up 複雑系科学からのヒント・メタファ 作成: 2014-09-21
更新: 2014-09-22


    複雑系科学は,扱っている対象がひどく小さく単純なものに見えても,示唆するところが大きい。
    マクロ数学教育学は,これを有益なヒント,メタファとして用いることができる。


    例. 「螺旋運動」

    ここに「全国学力テスト」がある。
    自治体は,順位を上げる競争の中にいる。

    順位レースは,ゼロ・サム・ゲームである。
    順位が上がるとは,順位を下げるところがあるということである。
    ゼロ・サム・ゲームは,順位の低い者にプレッシャーがきついというのではなく,参入者すべてにプレッシャーがきつい,というものになる。

    このレースは,どのような展開になるか?

    複雑系科学の主題になるところの「螺旋運動」になる。
    実際,上位を競う運動は,終わりがないから,永久運動である。
    そして,この永久運動は,螺旋運動に回収される。

    しかし,ほんとうに螺旋運動で永久運動するのか?

    このシミュレーションは,既に粘菌がやってくれている。
    粘菌は,単細胞のアメーバの集合である。
    個々のアメーバは,集団の頂点を目指して移動する。
    これは,螺旋運動で,頂点に螺旋の中心が居続けるものになる。
    集団の形は次第に棒状になり,接地面を小さくしていく。
    そして,ついに倒れる。
    しかし螺旋運動は続くので,横に這っていく格好になる。

    「集団の形が棒状になり接地面を小さくしていく」
      「全国学力テスト自治体順位競争」の場合だと,教育が「順位を高くする教育」ということで全国一様になるということである。
      また,多様であることによる免疫性を失うということである。
    「ついに倒れる」
      免疫を失った教育は,ちょっとしたことが躓きになって,一斉に倒れる。
      順位競争が支えになるかというと,「順位が高い=教育がよい」はもともと幻想であるから,そうはならない。
    「螺旋運動は続くので,横に這っていく格好になる」
      教育の一様化は,「みなといっしょ」を求めるカラダの形成である。
      そこで,目標に見えるものが現れると,集団ヒステリー的にそれに一斉に向かい,そしてそのことで競争する。

    常識は,「競争は個の多様化に進む」である。
    しかし,粘菌運動の示唆するところは,これとは逆の,「一様化に進む」である。