Up 「文字式」に対する初歩的誤解  


    「式」の英語訳は,「expression (表現)」。
    実際,数学の「式」は,対象・関係の表現である。

    表現の要点は,
    1. 意味が相手に間違いなく伝わる
    2. 扱いやすい
    特に,表現の「適切さ」は,ケース・バイ・ケースで決まってくる。
    「いつもこうでなければならない」というものではない。


    ところが,学校数学では,「文字式」に対するつぎの考え方が定着している:
    1. 文字式では,文字はアルファベット1字
    2. 文字式では,算法の記号は省略する
    特に,
      文字式は,短いほど・省略されているほど,高級
    のような感覚がもたれるようになる。
    教師は,正しいことの指導だと思って,自分のこの認識・感覚を生徒に植え付ける。


    「文字式」をこのように考えるのは,間違いである。
    間違いであることを簡単に納得するには,コンピュータ・プログラムを考えるとよい。 ──コンピュータ・プログラムは,文字式使用の最も実際的な形であり,したがって最も洗練された形である。

    コンピュータ・プログラムでは,つぎのようになる:
    1. 対象式として使う文字式は,対象をしっかり表すようなことばにする。
    2. 「算法の記号の省略」という概念はない。──省略したら,別の意味になってしまう。

    たとえば「y=ax」は,コンピュータ・プログラムなら「y= HireiTeisu * x」のようになる。 ──さらに,代替記号・変項記号に日本語も使ってよいプログラム言語なら,「y= 比例定数 * x」と書いてもよいわけだ。