Γtij の座標変換公式
Γ′t ij = ∂x′t∂xp∂xm∂x′j∂xl∂x′iΓplm + ∂x′t∂xr∂2xr∂x′i∂x′j
が示すように,Γtij はテンソルではない。
微分はテンソルではない
テンソルの資格がないのは、クリストッフェル記号だけではない。
ベクトルを普通に微分したものもテンソルではない。
例えば反変ベクトルを微分したものは,次のように変換される:。
∂a′i∂x′j = ∂∂x′j a′i = ∂xk∂x′j∂∂xk(∂x′i∂xlal)= ∂xk∂x′j(∂2x′i∂xk∂xlal+∂x′i∂xl∂al∂xk)= ∂xk∂x′j∂2x′i∂xk∂xlal+∂xk∂x′j∂x′i∂xl∂al∂xk
もし第 1 項だけだったならば、これは 2 階の混合テンソルの変換規則になっていると言える。しかし第 2 項が余分なのである。第 2 項には 2 階微分が含まれているので、ローレンツ変換のような場合にはちゃんと 0 になってくれているが、一般的にはそうはならない。 共変ベクトルを微分した場合にも同じ事が言える。
∂a′i∂x′j = ∂∂x′ja′i = ∂∂x′j(∂xl∂x′ial)= ∂2xl∂x′i∂x′jal+∂xl∂x′i∂∂x′jal= ∂2xl∂x′i∂x′jal+∂xl∂x′i∂xk∂x′j∂∂xkal= ∂2xl∂x′i∂x′jal+∂xl∂x′i∂xk∂x′j∂al∂xk
すぐ上の反変の場合の計算とは少し計算手順が違うことに,気付くべし。
1 行目から 2 行目への変形でa′iだけを変換して、
∂∂x′jの部分をそのままにしてある。この理由は、2 行目の
∂xl∂x′iの部分が、『x系の座標をx′系の変数で表したものをx′で偏微分した』ことを意味しており、変数は依然としてx′系で表されているためである。これをxで偏微分することはナンセンスなので、x′で偏微分できるようにしたわけだ。
共変微分はテンソル
普通の微分はテンソルではないことが確認できた。しかし何と、共変微分はテンソル──2 階の共変テンソル──になっているのである。
共変微分というのは、普通の微分とクリストッフェル記号という、両方ともテンソルでない物を組み合わせて出来ているが、それぞれの変換から出てくる余分の項がうまい具合に打ち消しあって、テンソルとしての変換を実現しているのである。
∇′ja′i = ∂a′i∂x′j−Γ′t ija′t= ∂xl∂x′i∂xk∂x′j∂al∂xk + ∂2xl∂x′i∂x′jal − (∂x′t∂xp∂xm∂x′j∂xl∂x′iΓplm+∂x′t∂xr∂2xr∂x′i∂x′j)∂xq∂x′taq= ∂xl∂x′i∂xk∂x′j∂al∂xk + ∂2xl∂x′i∂x′jal − ∂xq∂xp∂xm∂x′j∂xl∂x′iΓplmaq − ∂xq∂xr∂2xr∂x′i∂x′jaq= ∂xl∂x′i∂xk∂x′j∂al∂xk + ∂2xl∂x′i∂x′jal − ∂xm∂x′j∂xl∂x′iΓplmap − ∂2xr∂x′i∂x′jar= ∂xl∂x′i∂xk∂x′j∂al∂xk − ∂xm∂x′j∂xl∂x′iΓplmap= ∂xl∂x′i∂xk∂x′j(∂al∂xk − Γplkap)= ∂xl∂x′i∂xk∂x′j∇kal
共変微分の名前の由来
共変微分は座標変換を施しても形式が変化したりはしない。こういう性質を「共変形式」であるというのだった。
共変微分の名前の由来は「共変ベクトルaiを微分するから」ではないし、共変テンソルとして振舞うからでもない。共変形式を作る微分だという意味である。「反変微分」なんてものはないのだ。
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